老後のライフプランを考える中で、年金は60歳からもらった方が賢いのかと受給開始年齢について迷っていませんか。
一度請求すると、原則として取り消しや受給開始時期の変更ができません。
そのため、損をして老後の生活が苦しくならないか不安に感じてしまいますよね。
実際に60歳まで前倒しした場合、生年月日によっては最大30%の減額が一生涯続くことになり、長生きするほど総受給額で損をする可能性があります。※
この記事では、何歳まで生きると損になるのかという損益分岐点や、雇用保険の基本手当(失業保険)との調整に関する注意点を詳しく解説します。
さらに、60歳以降の働き方や貯蓄額に合わせた具体的なシミュレーションもあわせて紹介します。
ご自身のライフスタイルに合った後悔のない選択をするために、ぜひ参考にしてください。
※繰上げ受給の減額率は生年月日により異なります。昭和37年4月1日以前生まれの方は1カ月あたり0.5%で最大30%、昭和37年4月2日以降生まれの方は1カ月あたり0.4%で最大24%の減額となります。
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年金を60歳からもらう繰り上げ受給の仕組みと減額率を解説
年金を60歳から受け取るための制度の仕組みと、それに伴う減額のルールについて解説します。
ここでは、前倒しで受け取るための基本的な条件や、年代ごとの具体的な減額割合について詳しく見ていきます。
繰り上げ受給とは、本来65歳から受け取る年金を60歳から前倒しで受け取れる制度です。
生年月日に応じた減額率が適用され、一度選択すると一生涯減額が続く点が特徴です。
以下の内容を参考にして、ご自身に合う受給開始時期を検討するための知識を深めてください。
繰り上げ受給は本来65歳から受け取る年金を前倒しできる制度
本来であれば65歳から支給される老齢年金を、希望によって60歳から65歳になるまでの間に前倒しで受け取れる仕組みが存在します。
- 60歳から65歳になるまでの間に前倒し可能
- 国民年金と厚生年金は同時に手続きが必要
- 1カ月あたりの支給額は本来より少なくなる
例えば、60歳で完全にリタイアして貯蓄を取り崩す生活に不安がある場合、毎月の定期的な公的収入を得られる選択肢となり得ます。
もちろん、国民年金と厚生年金の両方に加入している方は、原則として同時に前倒しの手続きを行う必要があります。
老齢基礎年金と老齢厚生年金という2つの柱をセットで動かすことになるため、片方だけを遅らせるといった柔軟な対応はできません。
ただし、早く受け取り始めることで総受給期間は長くなりますが、1カ月あたりの支給額は本来の金額よりも少なく設定されます。
目先の現金が必要だからといって焦って手続きを進めるのではなく、まずは制度の全体像を冷静に把握しましょう。
生年月日によって1カ月あたりの減額率が異なるため注意が必要だ
前倒しで受け取る際に差し引かれる割合は、ご自身の生年月日によって定められています。
具体的には、昭和37年4月1日以前に生まれた方は1カ月早めるごとに0.5%、昭和37年4月2日以降に生まれた方は0.4%が差し引かれます。
| 生年月日 | 1カ月あたりの減額率 |
|---|---|
| 昭和37年4月1日以前生まれ | 0.5% |
| 昭和37年4月2日以降生まれ | 0.4% |
実際に計算してみると、60歳0カ月で受け取りを開始した場合、本来の金額から最大で24%から30%も減額される計算になります。
例えば、本来なら毎月15万円を受け取れる予定だった方が60歳から受け取ると、毎月10万5千円から11万4千円程度まで下がってしまいます。
実は、この差し引かれる割合は法改正によって変更された背景があるため、古い情報を鵜呑みにしないよう気をつける必要があります。
ご自身の生年月日と請求予定時期を照らし合わせて、実際にどれくらい支給額が減るのかを事前にしっかりとシミュレーションしておいてください。
一度繰り上げ受給を選択すると一生涯減額された年金額が続く
65歳に到達したからといって本来の満額に戻ることはなく、減らされた状態の支給額が一生涯にわたって継続します。
- 請求後は取り消しや受給開始時期の変更ができない
- 65歳になっても本来の満額には戻らない
- 長生きした場合、減額された年金額が家計に影響する可能性がある
仮に80歳や90歳まで長生きした場合でも、ずっと少ない金額のままで毎月の生活費をやりくりしていく必要があります。
高齢になるほど医療費や介護費用の負担が増加する傾向にあるため、支給額が少ない状態が続くことは家計にとって大きなリスクと言えるでしょう。
途中で病気になって働き口を失ったとしても、後から本来の金額に戻してほしいという申し出は制度上受け付けられません。
そのため、現在の健康状態や親族の寿命傾向なども考慮し、長生きした場合の資金ショートのリスクを現実的に見積もっておくべきです。
将来のインフレによる物価上昇への備えも含め、長期的な視点で本当に前倒しすべきかどうかを慎重に判断しましょう。
60歳から年金をもらう前に知るべき繰り上げ受給のデメリット
年金を早く受け取る選択には、毎月の収入を得られやすい一方で、いくつかの注意点が存在します。
例えば、退職後に生活を支えるための給付金と年金が、どちらか一方しか受け取れなくなるケースも存在します。
- 失業保険(基本手当)との併給
- 事後重症による障害基礎年金
- 寡婦年金
知らなかったと後悔しないためにも、制度の仕組みを正しく理解しておくことが大切と言えるでしょう。
以下では、それぞれのデメリットの詳細について解説します。
65歳になるまで失業保険と老齢厚生年金は同時に受け取れない
65歳に達するまでの期間は、雇用保険の基本手当と老齢厚生年金の両方を受け取る権利があっても調整が入ります。
65歳になるまでに雇用保険の基本手当を受給する場合、一定期間の老齢厚生年金は制度上、全額支給停止となります。
基本手当と老齢厚生年金の見込額は個人ごとに異なるため、受給期間や支給停止期間を含めて確認することが大切です。
例えば、60歳で定年退職し、再就職先を探しながら生活費を補おうと考えていた場合に計画が狂ってしまう可能性があります。
基本手当と老齢厚生年金の金額は、離職前の賃金や年金加入記録などによって異なります。
どちらが高くなるかは一概に言えないため、受給見込額と支給停止期間を個別に確認しましょう。
退職後の生活資金を考える際は、どちらを受け取るのがご自身の状況に合っているか慎重に比較検討してください。
繰り上げ請求後は事後重症による障害年金を受け取れない
事後重症とは、病気やケガの初診日には症状が軽くても、後から状態が悪化して障害等級に該当することを指します。
- 事後重症による障害基礎年金の請求権がなくなる
- 65歳に達したものとみなされるため
- 将来、障害年金を含めた収入保障の選択肢が限られる可能性がある
繰り上げ受給を選択すると制度上は65歳に達したものとみなされるため、この請求ができなくなります。
例えば、繰り上げ請求後に症状が悪化した場合、事後重症などによる障害基礎年金・障害厚生年金を新たに請求できないことがあります。
目先の資金確保も大切ですが、将来の医療費や介護費用に対する備えが手薄になるリスクを伴います。
ご自身の現在の健康状態や家族の病歴などを総合的に考慮したうえで、本当に今すぐ受け取るべきか慎重に判断しましょう。
寡婦年金の受給権利がある場合は繰り上げ請求によって消滅する
寡婦年金とは、国民年金の第1号被保険者として一定期間保険料を納めた夫が年金を受け取らずに亡くなった場合などに妻へ支給される制度です。
ご自身の老齢基礎年金を受け取り始めると、寡婦年金の受給権は消滅します。
寡婦年金の方が高額になるケースもあるため、年金事務所への相談が推奨されます。
ご自身の老齢基礎年金を受け取り始めると、この遺族に対する保障制度を同時に利用することはできません。
例えば、これまで専業主婦として家庭を支えてきた方が、目先の生活費のために手続きを進めると損をする可能性があります。
実際に受け取れる金額を比較すると、ご自身の繰り上げ後の年金額よりも、寡婦年金の額の方が高くなる場合もあります。
ご夫婦の年金加入状況をしっかりと確認し、どちらを優先すべきか年金事務所に相談することをおすすめします。
60歳以降も働く場合は在職老齢年金制度によって支給停止される
これは在職老齢年金制度と呼ばれる仕組みで、給与と年金の合計額が一定の基準を超えた場合に調整が入るルールです。
2026年4月以降は、賞与を月額換算した賃金と老齢厚生年金の基本月額の合計が月額65万円を超えると、超過額に応じて老齢厚生年金の一部または全部が支給停止となります。
- 給与と年金の合計額が一定基準を超えると調整が入る
- 年金の一部または全額が支給停止となる可能性がある
- 働き方と見込まれる収入額の事前算出が重要
実は、早く受け取る手続きを済ませても、収入が多いと手元に入る金額が大幅に減ってしまう可能性があります。
例えば、現役時代と変わらないほどの収入を得ている場合、せっかく手続きをしても収入額によっては、老齢厚生年金が全額支給停止となる場合があります。
働きながら年金を受け取るつもりが、想定外の減額で困ったなと焦ってしまいますよね。
今後の働き方と見込まれる収入額をあらかじめ算出し、受け取れる年金額への影響を事前に確認しておくことが大切です。
年金を60歳からもらった方が賢いと感じる繰り上げ受給のメリット
年金を前倒しで受け取る選択には、生涯にわたる減額というリスクがある一方で、早期受給ならではの特有のメリットも存在します。
ご自身の現在の貯蓄状況や今後のライフスタイルによっては、前倒しで受け取ることが有力な選択肢となるケースも少なくありません。
例えば、定年退職後に再就職をせず、手元の資金だけで毎月の生活費を賄っていくことに強い不安を感じている状況を想像してみてください。
- 定年退職後の無収入期間をカバーできる
- 健康で活動的な時期から、毎月の年金収入を趣味や旅行などに活用できる
- 損益分岐点前に亡くなった場合、本人単体の額面累計額では60歳開始の方が多くなることがある
また、健康で活動的な時期にまとまった資金を活用できることも、豊かなセカンドライフを送るうえで重要なポイントになります。
以下では、ご自身の状況に合わせて賢く制度を活用するために、前倒しで受け取ることで得られる具体的な利点について詳しく解説します。
早くから年金を受け取ることで無収入期間の生活資金を確保できる
60歳で仕事を完全にリタイアすると、老齢基礎年金・老齢厚生年金は原則65歳からの受給となるため、収入源が途絶えてしまう状態になります。
例えば、毎月の生活費として20万円が必要な場合、5年間で1200万円もの貯蓄を取り崩す計算になります。
これだけの大きな金額を毎月切り崩していくことに、将来への強いストレスを感じる方も多いのではないでしょうか。
早期に受給を開始すれば、不足する生活費の一部を毎月補填できるため、貯蓄の減少スピードを緩やかにできます。
ご自身の貯蓄残高と毎月の支出を正確に計算したうえで、早期受給の必要性を検討してみてください。
健康で体力がある60代前半のうちに趣味や旅行へお金を使える
年齢を重ねるにつれて健康上のリスクは高まり、長時間の移動や活動的な趣味を楽しむことが難しくなる傾向があります。
- 気力や体力が充実している時期に自由にお金を使える
- 海外旅行や新しい趣味への投資が可能
- セカンドライフの目標実現に役立つ
例えば、夫婦で海外旅行に行ったり、新しいスポーツに挑戦したりするには、相応の体力とまとまった資金が必要です。
65歳以降に十分な年金を受け取れたとしても、その資金を存分に活用できる健康状態であるとは限りません。
だからこそ、活動的な60代前半のうちに前倒しで資金を受け取り、人生を豊かにするための投資に回すという考え方もあります。
セカンドライフで実現したい明確な目標がある方は、資金の使い道という観点からも受給開始時期を検討しましょう。
万が一早く亡くなった場合は総受給額が65歳開始より多くなる
年金の損益分岐点は、減額率によって異なりますが、およそ76歳から80歳付近に設定されています。※1
損益分岐点(76歳〜80歳付近)に到達する前に亡くなった場合、本人単体の累計受給額としては60歳開始の方が多くなる傾向があります。※2
つまり、この損益分岐点となる年齢に到達する前に亡くなった場合、早期受給を選択していた方が総額では得をすることになります。
例えば、持病などで将来の健康に不安がある場合、早い段階から資金を受け取っておくことが一つの選択肢となる場合があります。※3
寿命を正確に予測することは誰にもできませんが、ご自身の健康状態や家族の病歴などを一つの判断材料にすることは可能です。
目先の金額だけでなく、生涯にわたる資金計画という広い視野を持って、慎重にシミュレーションを行うことをおすすめします。
※1 税金や社会保険料などを考慮しない単純計算では、60歳0カ月から受給した場合の損益分岐点は、減額率0.5%で76歳8カ月、0.4%で80歳10カ月です。
※2 遺族年金など世帯全体での受給総額に影響する場合もあるため、総合的な確認が必要です。
※3 事後重症などによる障害年金を請求できなくなる点も含めて比較する必要があります。
60歳からの年金受給はいつまで生きると損?損益分岐点を徹底検証
年金を前倒しで受け取った場合、何歳まで生きると損になるのかという疑問にお答えします。
損益分岐点と呼ばれるこの逆転のタイミングは、生年月日に応じて適用される減額率によって大きく変わります。
| 減額率 | 損益分岐点 |
|---|---|
| 0.4%(昭和37年4月2日以降生まれ) | 80歳10カ月 |
| 0.5%(昭和37年4月1日以前生まれ) | 76歳8カ月 |
例えば、減額率が0.4%の世代と0.5%の世代では、損益分岐点となる年齢に数年の差が生じる仕組みです。
額面の年金額だけを単純比較した場合、損益分岐点を超えて長く受給するほど、65歳開始との差が広がります。
もちろん、健康状態や生活水準は人それぞれ異なるため、単純な年齢の比較だけで最適な答えが出せるわけではありません。
以下では、それぞれの減額率ごとの具体的な損益分岐点や、手取り額に注目した比較について詳しく解説します。
減額率0.4%の場合は80歳10カ月が損益分岐点になる
60歳から前倒しで受け取ると、毎月の受給額が最大24%減少した状態が一生涯続くことになります。
昭和37年4月2日以降生まれの方に適用され、80歳10カ月で65歳開始の総額が上回ります。
平均寿命を踏まえると、多くの方がこの分岐点を超える可能性が高いです。
実際に、この減額された年金と65歳から本来の額で受け取る年金の累計額を比較すると、80歳10カ月に到達した時点で65歳開始の総額が上回ります。
例えば、65歳から毎月15万円受け取れる予定の方が60歳から受け取る場合、毎月の額は11万4千円に減額されます。
毎月3万6千円のマイナスが生じるため、家計のやりくりに不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
男性の平均寿命が81歳前後であることを踏まえると、多くの方がこの損益分岐点を超える可能性が高いと言えるでしょう。※
女性の場合はさらに平均寿命が長いため、累計額でのマイナス幅がより大きくなる点には注意が必要です。
ご自身の健康状態や家系的な寿命の傾向も考慮して、慎重に受給開始時期を検討してみてください。
※2025年簡易生命表では、60歳時点の平均余命は男性23.86年、女性29.07年です。ただし、これは平均値であり、個人が損益分岐点を超えるかどうかを直接示すものではありません。
減額率0.5%の場合は76歳8カ月で総受給額が逆転する
1カ月前倒しするごとに0.5%減額されるため、60歳から受け取ると最大30%もの減額が適用されます。
- 昭和37年4月1日以前生まれの方に適用される
- 76歳8カ月で総受給額が逆転する
- 長生きするほど累計額でのマイナスが大きくなる
この条件で計算すると、65歳から本来の額を受け取った場合の累計額に追いつかれる年齢が、76歳8カ月という結果になります。
例えば、本来なら毎月15万円もらえるはずが、60歳からだと毎月10万5,000円になり、年間で54万円もの差が生じる計算です。
これほどの金額差が生じると、医療費や介護費用が必要になった際に手元の資金が枯渇してしまうリスクが高まります。
76歳という年齢は現在の平均寿命よりもかなり若いため、長生きするほど累計額でのマイナスが大きくなる点には注意が必要です。
実は、この減額率は一度決定されると後から変更できず、途中で受給を止めることも認められていません。
目先の資金確保だけでなく、80代以降の生活費が不足しないか十分にシミュレーションを行いましょう。
税金や社会保険料を考慮した手取り額ベースでの比較も重要になる
年金の額面が減ると、それに連動して所得税や住民税、国民健康保険料などの負担額も安くなる仕組みが設けられています。
- 年金の額面が減ると税金や社会保険料の負担も安くなる
- 手取り額で見ると損益分岐点はさらに数年後ろ倒しになる可能性がある※1
- 自治体や扶養家族の有無によって変動するため個別シミュレーションが必要
額面上の損益分岐点が80歳10カ月であっても、手取り額で計算し直すと、総受給額が逆転する年齢はさらに数年後ろ倒しになります。
額面だけで判断すると早期受給が不利に見える場合でも、手取り額で見ると損益分岐点が変わることがあるため、税金や社会保険料も含めて確認することが重要です。
税金や保険料の負担額が減ることで、毎月の生活費として自由に使えるお金の割合は相対的に高くなると言えるでしょう。
ただし、税率や保険料はお住まいの自治体や扶養家族の有無によって変動するため、単純な計算式だけでは正確な数字を導き出せません。
ご自身の置かれている状況によって、差し引かれる金額の割合は大きく変わる点には注意が必要です。
より現実的な資金計画を立てるためにも、お近くの年金事務所や専門家に手取り額でのシミュレーションを依頼することをおすすめします。
※1 税金や社会保険料を考慮すると損益分岐点が変わる場合がありますが、その時期は所得や家族構成、自治体などによって異なります。
貯蓄額や就労状況から考える60歳受給の具体的なシミュレーション
年金の受給開始年齢を判断するうえで、ご自身の資産状況や今後の働き方を具体的に想定することは重要です。
ここでは、貯蓄額や就労状況といったライフスタイルに応じた、60歳から受け取る場合のシミュレーションを解説します。
受給開始のタイミングを決定する際は、単なる損得勘定だけでなく、毎月のキャッシュフローがどのように変化するかを見極める必要があります。
手元資金が少ない状態で無収入期間を迎えると、生活費が不足する可能性があります。
実際に、手元の資金に余裕がない状態のまま無収入の期間を迎えると、生活費の不足リスクが高まる恐れがあると言えるでしょう。
例えば、毎月の生活費が25万円かかるご家庭で、給与収入が途絶えた場合の家計の推移を想像してみてください。
このようなケースでは、減額を受け入れてでも、早期に継続的な公的収入を確保することで、精神的なゆとりをもって生活できる可能性があります。
もちろん、配偶者の年齢や年金加入歴によっても選択肢は異なりますので、世帯全体の収入と支出のバランスを総合的に評価することが求められます。
以下では、それぞれの状況に合わせた具体的なシミュレーションについて詳しく解説します。
貯蓄が少なく60歳で完全リタイアする人は早期受給の恩恵が大きい
実際に、60歳から65歳までの5年間を無収入で過ごすためには、多額の老後資金を取り崩す必要があるため、家計への負担は計り知れません。
- 無収入期間の生活費不足を緩和できる場合がある
- 毎月の年金収入を生活費の一部に充て、家計を支えられる場合がある
- 多額の老後資金を取り崩す不安を軽減できる
例えば、毎月の生活費が25万円かかる場合、5年間で1500万円もの現金が手元から消えていく計算になります。
十分な貯蓄がない状態でこの期間を迎えると、日々の食費や光熱費の支払いすら困難になり、生活が立ち行かなくなる恐れがあるでしょう。
一方で、60歳から年金を受け取ることで、減額されたとしても毎月現金収入を得られるため、生活基盤を維持しやすくなる場合があります。
一生涯にわたって受給額が下がるというデメリットは存在しますが、まずは当面の生活費をどのように確保するかを優先的に検討する必要があります。
ご自身の現在の預金残高を正確に把握し、無収入の期間を乗り切れるだけの余力があるかどうかを冷静に確認してください。
※一生涯減額された年金額で固定されるため、将来の長寿リスクや支出増加への備えを慎重に考慮する必要があります。
60歳以降もパート収入がある人は生活費の不足分だけを補填できる
完全に仕事から離れるケースとは異なり、毎月一定の労働収入が確保できているため、年金に生活のすべてを依存する必要がありません。
- 給与収入で足りない生活費の不足分だけを年金で補填する
- 家計の収支バランスが安定し貯蓄の急減を回避できる
- 在職老齢年金による支給停止基準には注意が必要
例えば、毎月の生活費が25万円かかるところ、パート収入で15万円を得られる状況であれば、不足する10万円を年金でカバーする形になります。
このように、給与と年金を組み合わせることで、家計の不足額や貯蓄の取り崩しを抑えられる場合があります。
ただし、働きながら年金を受け取る場合、在職老齢年金という制度の対象となる点には注意が必要です。
この制度は、給与と年金の合計額が一定の基準を超えると、年金の一部または全額が支給停止される仕組みとなっています。
ご自身が予定している60歳以降の月収と、受け取れる年金の見込額を照らし合わせ、支給停止の基準に引っかからないか事前に計算してみましょう。
夫婦の年齢差や厚生年金の加入状況によって受給時期は変わる
年金をいつから受け取るべきかという問題は、ご自身の状況だけでなく、配偶者との年齢差やこれまでの働き方によっても答えが異なります。
加給年金や振替加算といった特別な給付は、夫婦の年齢差や加入期間によって受け取れる条件が異なります。
前倒し受給によってこれらの恩恵を十分に受けられない可能性があるため、世帯全体での検討が必要です。
実は、これらの特別な給付は、夫婦それぞれの厚生年金への加入期間や年齢の組み合わせによって、受け取れるかどうかが厳密に定められています。
例えば、会社員として長く働いた夫と専業主婦の妻というご家庭で、夫が妻よりも年上のケースを想像してみてください。
この場合、夫が65歳を迎えたタイミングで妻の分の加給年金が上乗せされる仕組みがありますが、前倒しで受給するとこの恩恵を十分に受けられない可能性があります。※
目先の収入を確保することも大切ですが、夫婦のどちらかが亡くなった後の遺族年金への影響も含めて、長期的な視点を持つことが不可欠です。
ねんきん定期便などを活用して夫婦お二人の加入状況を確認し、世帯全体の収支や希望に合う受給計画を慎重に検討してみてください。
※加給年金の有無は、65歳到達時点の厚生年金加入期間、配偶者の年齢や年金受給権などによって決まるため、夫婦それぞれの条件を確認する必要があります。
自分が年金を60歳からもらった方が賢いか判断するチェックリスト
年金の受給開始年齢を決定するにあたり、ご自身にとってどの選択が合っているかを判断するための具体的な基準を解説します。
現在の健康状態や定年後の働き方、そして手元にある資産の状況が重要な判断材料となります。
- 現在の健康状態と将来の医療費への不安
- 定年後の働き方と見込まれる収入
- 手元にある資産と毎月の生活費のバランス
以下に挙げる4つのチェックポイントをご自身の状況と照らし合わせながら、受給プランを検討してみてください。
健康状態に不安があり早めにまとまった資金が欲しい人は向いている
早く受け取ることで、元気なうちに旅行や趣味にお金を使えるという大きな利点があると言えるでしょう。
例えば、医療費の負担が心配な状況であっても、毎月の定期的な収入があれば心強い生活基盤となります。
もちろん、一度減額された受給額は一生涯続くという点には注意が必要です。
生涯にわたる収入減少のリスクを考慮しても、目先の安心感を優先したい方は少なくありません。
日々の生活にゆとりを持たせる観点だけでなく、減額が一生涯続く点や障害年金等への影響も比較しながら、受給開始時期を検討しましょう。
60歳以降も十分な給与収入があり貯蓄に余裕がある人は向いていない
実は、在職老齢年金という仕組みにより、給与と年金の合計額が一定の基準を超えると年金が支給停止となる可能性があります。
- 定年後も働き続けて安定した収入がある
- 手元の資産に余裕がある
- 在職老齢年金により支給停止となる可能性がある
毎月の生活費を給料だけで十分に賄える状況であれば、急いで受け取る必要はありません。
せっかく早く受け取る手続きをしても、制度の壁に阻まれて手元にお金が残らないケースも存在します。
減額された年金を無理に受け取って損をするよりも、本来の受給年齢まで待つ選択も比較検討するとよいでしょう。
生活費を給与で賄える場合は、65歳まで待つ場合と繰り上げる場合の累計受給額や資金用途を比較して判断しましょう。
現在の収入状況をしっかりと把握し、受給開始のタイミングを慎重に見極めることをおすすめします。
繰り下げ受給で将来の年金額を増やしたい人は65歳以降を検討する
長生きのリスクに備えて将来受け取る年金額を増やしたい方は、65歳以降の受け取りを視野に入れてください。
受給開始を遅らせることで、1カ月遅らせるごとに受給額が0.7%ずつ増額されます。
長生きのリスクに備えて将来受け取る年金額を増やしたい方に適しています。
例えば、70歳まで受け取りを待つことができれば、本来の金額よりも42%増えた年金を一生涯受け取り続けることが可能です。
手元の貯蓄を取り崩しながら生活できるだけのゆとりがある方にとっては、有力な選択肢となる場合があります。
しかし、受給開始前に万が一のことがあった場合のリスクも考慮しなければなりません。
繰り下げ受給は将来の年金額を増やせる一方、受給開始までの生活資金や税金・社会保険料などへの影響も含めて検討する必要があります。
ご自身の健康状態や家系の寿命なども加味して、後悔のない受給開始年齢を計画しましょう。
判断に迷う場合は年金事務所や専門家へ個別に相談することが大切だ
年金制度は複雑であり、個人の加入履歴や家族構成によって受け取れる金額やタイミングが変動するためです。
- 年金事務所(実際のデータに基づいた正確なシミュレーション)
- 街角の年金相談センター
- ファイナンシャルプランナー(総合的なライフプランの相談)
最寄りの年金事務所へ足を運ぶことで、実際のデータに基づいた試算の作成を無料で相談・依頼することが可能です。
将来の不確実な要素をすべて個人で計算し尽くすのは難しいため、客観的な視点を取り入れることが重要です。
また、より総合的なライフプランを立てたい場合は、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談するのも一つの有効な手段です。
請求後は取り消せないため、判断に迷う場合は専門機関への相談も検討してください。
60歳からの年金繰り上げ受給に関するよくある質問
年金を60歳から受け取る際によく寄せられる疑問にお答えするセクションです。
老後の資金計画を立てる中で、制度の細かいルールや具体的な手続き方法について不安を感じる方は少なくありません。
実際に手続きを進めようとした段階で、思いもよらなかった疑問が次々と湧いてくるのは当然のことだと言えるでしょう。
例えば、申請後の取り消しができるのかといった、手続きを終えた後のトラブルを心配する声が目立ちます。
また、自分一人の決断が配偶者の生活にどのような影響を与えるのかといった、家族全体に関わる疑問も多く寄せられています。
以下では、それぞれの詳細について解説します。
Q. 60歳から年金をもらうと具体的にいくら減るか計算できますか?
自身の生年月日に応じた減額率を、本来受け取る予定の年金額に掛け合わせる仕組みが設けられています。
- ねんきん定期便を活用する
- 日本年金機構のウェブサイトで計算する
- 本来の年金額に生年月日に応じた減額率を掛け合わせる
ねんきん定期便とは、毎年の誕生月に送られてくる年金記録の通知書のことです。
例えば、本来の年金額が月額15万円で減額率が24%の場合、毎月3万6千円が差し引かれる計算になります。
つまり、実際に受け取れる金額は月額11万4千円となり、この金額が生涯にわたって続くことになります。
ただし、将来の物価変動やマクロ経済スライドの影響により、実際の受給額が計算通りにならない点には注意が必要です。
ご自身の正確な減額幅を知るために、まずは最新の年金記録を確認してみてください。
Q. 繰り上げ受給の手続きはどこでどのように行えばよいですか?
手続きには、老齢年金支給繰上げ請求書という専用の書類に必要事項を記入し、戸籍謄本などの本人確認書類を添えて提出する必要があります。※1
老齢年金支給繰上げ請求書という専用の書類に必要事項を記入し、戸籍謄本などの本人確認書類を準備します。
スムーズに手続きを進めるためにも、事前に年金事務所または街角の年金相談センターへ電話で予約を取ります。
記入漏れや添付書類の不備を防ぐためにも、初回の相談は直接窓口へ足を運んで書類を提出することをおすすめします。
街角の年金相談センターとは、日本年金機構から委託を受けて対面での相談や手続きを受け付けている窓口のことです。
例えば、60歳の誕生日の前日以降であれば、いつでもご自身の好きなタイミングで窓口に書類を提出できます。※2
もちろん、郵送での提出も可能ですが、記入漏れや添付書類の不備を防ぐためにも、初回の相談は直接窓口へ足を運ぶことをおすすめします。
スムーズに手続きを進めるためにも、事前に電話で予約を取ってから訪問しましょう。
※1 添付書類は個人の状況により異なり、戸籍関係書類を省略できる場合もあります。
※2 請求月によって減額率が変わります。
Q. 夫が60歳で年金をもらい始めると妻の年金にも影響しますか?
夫婦であっても年金の記録や計算は個別に管理されているため、配偶者の選択がもう一方の基本となる年金額に波及しない仕組みとなっています。
妻自身の老齢基礎年金や老齢厚生年金の受給額が直接減らされることはありません。
ただし、夫が65歳未満で受け取る場合、60〜64歳の間は本来もらえるはずだった加給年金が支給されなくなる点に注意が必要です。※1
加給年金とは、厚生年金に長く加入していた人が要件を満たした際に、家族を養うための手当として上乗せされる年金のことです。
例えば、年間で約40万円ほど支給されるはずだった家族手当※2を受け取れなくなることで、世帯全体の収入計画が大きく狂ってしまうリスクがあります。
世帯全体での大幅な収入減少を防ぐためにも、夫婦の年金について一緒に話し合う機会を設けてください。
※1 夫が繰り上げ受給していても、65歳到達時点で所定の要件を満たせば加給年金が加算される場合があります。
※2 2026年度の配偶者加給年金額は、受給権者の生年月日などの要件により年額243,800円から423,700円です。
Q. 繰り上げ受給を一度申請した後に取り消すことは可能ですか?
国の制度として、請求書が受理された時点で減額率が固定され、生涯にわたってその決定が覆らない仕組みが設けられています。
- 後から申請を取り消すことは一切できない
- 減額率が固定され生涯にわたって適用される
- 障害基礎年金や寡婦年金などの給付を受け取る権利も失われる
減額率が固定されるとは、60歳で決まった受給額の割合が、80歳や90歳になっても変わらず適用され続けるということです。
例えば、申請直後に思いがけず再就職が決まって毎月の給与収入が得られるようになったとしても、元の65歳受給に戻すことは不可能です。
さらに、寡婦年金は支給されなくなり、事後重症などによる障害基礎年金・障害厚生年金を新たに請求できなくなります。
請求後は取り消せないため、必要に応じて申請前に年金事務所や専門家へ相談しましょう。
まとめ:年金は60歳からもらった方が賢いかは個人の状況で決まる
年金を60歳から受け取る繰り上げ受給が賢い選択となるかどうかは、健康状態や貯蓄額、退職後の働き方によって大きく異なります。
- 一律に得をする正解は存在しない
- 単なる損益分岐点の計算だけで決めるのは危険
- 自身の資産状況や老後のライフプランを整理する
- 年金事務所や専門家への相談を活用する
実際に年金制度では、受給を1カ月前倒しするごとに0.4%または0.5%の減額が一生涯続く仕組みが設けられています。
そのため、損益分岐点の計算だけでなく、収入、貯蓄、健康状態なども含めて判断する必要があります。
例えば、60歳で完全リタイアして十分な生活資金がない場合は、早期受給によって毎月の生活費を確保することが課題となります。
手元資産の取り崩しに対する不安を軽減できる場合があります。
一方で、60歳以降も働き続けて給与収入がある場合は、在職老齢年金制度による支給停止のリスクを考慮しなければなりません。
目先の損得勘定にとらわれず、ご自身の資産状況や老後のライフプランを改めて整理してみてください。
年金事務所や専門家への相談も視野に入れながら、ご自身の状況に合う受給開始時期を慎重に検討しましょう。
本記事は、年金制度に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務、社会保険、投資判断、金融商品・不動産取引上の判断を行うものではありません。必要資金、税金・社会保険料、各制度の利用可否、投資成果等は、年齢、収入、家族構成、資産状況、居住地、制度改正、市場環境等により異なります。具体的な税額、制度の適用可否、投資判断、ローン・不動産担保商品の利用については、必要に応じて税理士、社会保険の窓口、金融機関、不動産会社等にご確認ください。

